人生100年時代のキャリア。
様々な転機をしなやかに乗り越えて、次の一歩やキャリアへ踏み出した方々や地域や社会にむけて事業活動されている方々をご紹介します。
第1回目はフリーライターいとう啓子さん
第2回目は「整頓学」主宰 馬渕正彦さん
旅の朝の「おはよう」をすべての人に
今回は、「高齢や障害のために旅行ができないと思ってしまっている人もあきらめないで旅行に行って欲しい」という想いを持ち、昨年旅行会社を起業された おはようトラベル株式会社 代表取締役 野村国康さんにインタビューしました。
大学を卒業してどんな仕事に就いたのですか。
化学会社と製薬会社に28年間勤務しました。
20代は大学時代から始めたオーケストラが面白くて、あとから思うと仕事に真剣に取り組んでいたとは言えなかったですね。
会社を選んだ理由も「学生時代に楽しんだオーケストラが続けられそうで、学生時代にやりたかったけどできなかったスキーができそうで、給料がそこそこで、上下関係が厳しくなさそうで」というのが主な動機(笑)。希望してコピー機のトナーの原材料となる化学品の営業部に配属になったのですが、お客様に試験をしていただくサンプルのラベルを曲がって張って先輩に怒鳴られたり、休暇前に先輩に引き継ぐべきことをきちんとやらずに大迷惑をかけたり…
そんな感じの社員でしたね。
30歳の転機
30歳を過ぎたころ「あれ、こんなに長い時間いる職場での仕事、もっと真剣にしたほうが楽しいはず。」と気づきました。ふっと、そう思ったんです。そうしたら何を求められるかを考えるようになって。
そのときはじめて「あ、もったいなかったな、いままで。」と思いました。
そのころ影響を受けた本で「7つの習慣」があります。500ページくらいある自己啓発の本ですが、何気なく書店で手に取って読んだら引き込まれて一気に読みました。自分の心境の変化のタイミングとかみ合ったので、スーッと自分の中に入ってきたのです。
人生の原則、目的、優先順位を理解し実践することで自立ができて、自立した人間であった初めて他人との関係を築くことができるのだと。
また、そのころご縁があって墨田区の老舗Tシャツメーカー久米繊維工業の当時社長だった久米信行さんとお会いしました。
久米さんから「物事に好奇心をもち人に好奇心を持って、積極的に働きかけて関わっていくことの大切さ」を教えていただきました。
旅行会社を起業するきっかけ
会社では、30代以降、財務部門でキャッシュフロー管理や年金資産管理、システム導入や買収合併などの仕事にかかわり、旅行とは全く関係のない仕事をしていました。
十数年前に、祖父が大腿骨の骨折で入院しました。病院のすぐ裏で小学生の声が元気に聞こえていたのが、小学校の教師だった祖父にとっては少しばかりの慰めだったと思います。ある時その祖父のところへお見舞いに行くと「富士山を見たい」という話になりました。高齢のためにもう手術ができないという状況だったので、私はその言葉を聞き流してしまいました。
そのとき叶えられたかもしれない希望を叶えられなかったのが長年胸のつかえになっていて「行きたいけど行けない」と思っている人がたくさんいるだろうなと、思うようになりました。
それが旅行をやろうと思ったきっかけです。
ICBCとの関わり
「人生100年」なら「50歳から75歳」をもっと面白く生きようと、2018年の3月に会社を退職し、6月に会社設立。11月に旅行会社として営業を開始しました。
以前勤めていた会社で企業風土改革の雰囲気が盛り上がったときに『日本で一番大切にしたい会社』(坂本光司著)を読んで、従業員、取引先、顧客、地域社会、株主の「5人」を大切にする経営を学びました。そして、自分も「人を大切にする経営」を実践したいと思うようになりました。
会社員時代は長く自分が住んでいる地域のことをあまり知らずにいましたが、旅行の仕事をやるにあたって「地域のことを知らねば」と考えました。
地域の人をつなげて地域のビジネスを盛り上げようと活動する人たちの集まりであるICBCにたどり着きました。ICBCは多様な人材がいてみんなで知恵を出し合えるコミュニティで、楽しいです。
先日も「Soカフェ」に参加し、自分のビジネスについて会員の皆さんからいろいろなアドバイスをいただく機会がありました。事業を立ち上げてから試行錯誤の日々なので、そういう場はとてもありがたいです。
今のところ、そんなに儲かってるわけでもないですが、最近は問い合わせも増えてきています。基本的に楽観主義なので、なんとかなると思っています。

旅の楽しさで日常生活を盛り上げたい
最後に野村さんが事業で大切に思っていることを教えてください
当たり前ですが、日常生活は辛いことや楽しくないことも多いですよね。そんな時、旅先で特別な時間を大切な人と過ごすことができれば、日常も変わるかもしれないと思っています。
例えば、足腰に不安を持つ人、移動に車椅子が必要な人は、トイレや段差が気になり行動範囲が狭くなりがちです。そのような方々もちょっとのサポートで安心して出かけられ、新鮮な空気と景色を楽しむことができます。
行動範囲を広げるということだけでなく、旅先での楽しい気持ちや、自分の日常の枠を超える感覚が、日常生活での自信にもつながり毎日を楽しく過ごすきっかけにもなります。そういう楽しさを旅行でサポート出来たらと考えています。
旅の朝って特別じゃないですか。窓から入る光を感じて、小鳥のさえずりを感じて目を覚ます。窓を開けると光る湖面と山の緑が目にまぶしい。そんな朝を迎えればだれだって気分がよくなるのです。
だから社名は「おはようトラベル」です。
(インタビュアー ルスリール 浜田有里恵)

野村 国康さん(おはようトラベル株式会社 代表取締役)
おはようトラベル株式会社
https://ohatra.com
お問い合わせ
https://ohatra.com/contact
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